
倉庫業や物流の現場でキャリアを築くうえで、資格は業務の幅を広げ、転職やキャリアアップを後押しする手がかりになります。
この記事では、倉庫業・物流に関わる資格を整理しながら、それぞれの役割や取得要件、費用や難易度の目安までをわかりやすく解説します。
倉庫業・物流での資格|主な3分類

倉庫業・物流関連の資格は数多くありますが、大きく下記3つのグループに分かれます。
- 現場作業系:日々の倉庫業務に直結
- 管理・運営系:現場をまとめるリーダーや管理職に必要
- 国際物流系:輸出入や国際業務を扱う際に必要
役割ごとに、各系統の資格が”どんな業務や立場に対応しているのか”を把握して、自分にとっての取得の優先順位を立てるのに役立ててください。
現場作業で使う資格
現場作業系の資格は、倉庫内での荷役や保管を安全に進めるために役立ちます。
比較的、取得の難易度は高くはないですが、倉庫業・物流現場では取得していれば重宝される資格をご紹介します。
「フォークリフト運転技能講習」
最大荷重1トン以上のフォークリフトを操作する際に必須となる、まず第一に取得を検討すべき資格です。
原則、合計35時間程の講習で取得でき、倉庫業界では汎用性が高い資格とされています。
フォークリフト運転技能講習の取得の流れ・よくある不安などについては、「フォークリフト免許は無料で取れる!講習費用も負担を抑えて免許取得するには」の記事もご覧ください。
「玉掛け技能講習」
クレーンで荷物を吊る作業に必要な資格です。
フォークリフトの資格に加えて、取得すれば、荷役全般を一通りカバーしやすくなります。
「危険物取扱者(乙種4類)」
ガソリンやアルコール類など危険物の保管・取扱いに対応するための資格です。
合格率が32%とされ、比較的取り組みやすい国家資格としても知られています。
管理・リーダー職で求められる資格
管理・運営系の資格は、現場の安全や品質を管理する立場へ進むうえで力になります。
一現場作業員で終わらせず、より高度な知見・技術を身につけるなら、これらの管理・運営系の資格は視野に入れるべきでしょう。
「倉庫管理主任者」
倉庫業法に基づき、営業倉庫の運営には倉庫ごとに倉庫管理主任者の選任が義務付けられています。
厳密には「資格」ではないため、講習や資格試験は不要です。一定の要件を満たせば、倉庫管理主任者として施設の安全管理や防火・防虫、品質保持などを統括し、適正な保管体制を維持する役割を担います。
「衛生管理者(第1種)」
常時50人以上の事業場で、選任が義務付けられる資格です。
労働安全衛生法に基づき、職場の衛生管理や健康障害の防止を任されます。労働環境の改善や安全衛生活動の推進役として評価され、管理職への昇格に結びつきやすい国家資格とされています。
「ロジスティクス管理」「ロジスティクスオペレーション」(JILS認定)
日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が認定する、輸配送システムの企画や実行を担う資格です。
ロジスティクス管理は「いかに効率よく輸送をしていくか」の全体の流れを考え、ロジスティクスオペレーション「いかに効率よく安全に日々作業を行うか」の現場作業の工程を考えます。
現場担当者から管理職まで、段階的にスキルを証明できる資格として活用されています。
国際物流・専門職向けの資格
国際物流系の資格は、輸出入や貿易に関わる業務へ進む際に評価されます。
通関書類の読解や貿易取引条件の国際ルールの順守、輸送手配などの基礎理解を示せるため、未経験から専門領域へ踏み出す際の安心材料にもなります。
「通関士」
輸出入の通関手続きを担う国家資格です。
合格率は10〜24%程度と難関とされますが、独占業務を持つため転職市場での評価が高い傾向があります。
「貿易実務検定」
国際物流の知識を証明する民間資格です。
A級からC級まで段階的に取得でき、学習の入り口として選ばれています。
「国際航空貨物取扱士」
航空貨物の取り扱いに特化した、国際航空運送協会(IATA)が認定する専門資格です。
国際的な航空貨物を輸送するだけでなく、危険物取り扱いや運賃計算などの業務を担い、専門性を打ち出したい場合に向いています。
法律義務のある役職・資格

倉庫業・物流で法的に必須の資格は多くありません。混同しやすいのが、作業者本人が受ける技能講習と、事業者が施設ごとに有資格者を選任する義務の違いです。
両者を分けて押さえると、必要な手続きが明確になります。代表的なものを紹介していきます。
倉庫管理主任者|営業倉庫には必ず1名必要
倉庫管理主任者は、倉庫業法第11条により、営業倉庫ごとに1名以上の選任が必須です。
主にこの役職は、施設の安全管理、防火・防虫、品質保持などを監督します。
この役職に就くための要件は、次のいずれかを満たす必要があります。
- 倉庫管理実務3年以上
- 管理職として倉庫管理実務2年以上
- 日本倉庫協会の講習修了
講習費は約1.2〜1.4万円(会員は約0.6〜0.8万円)。事業者が受講せずとも、要件を満たす人を選任すれば足ります。
倉庫現場によって追加される資格・要件
必要な資格や要件は、取り扱う商材によっても変わります。
- 消防法の対象となる危険物倉庫:甲種または乙種の危険物取扱者を有資格者として配置することが求められます。
- 毒物および劇物を扱う倉庫:毒物劇物取締法に基づき毒物劇物取扱責任者を選任し、都道府県への届出を行う必要があります。
- 冷蔵倉庫:資格よりも温度管理基準などの施設要件への適合が中心になります。
取り扱う商材が決まった段階で、適用される法令をセットで確認しておくと安心です。
目的別のおすすめ資格

資格の一覧を眺めても、自分に必要なものがどれか判断しにくいという声は少なくありません。
仕事内容や現場の商材、将来目指したいポジションによって優先度が変わるため、闇雲に選ぶと遠回りになりがちになりやすいです。
ここでは、立場や目的ごとに、どの資格から着手すると効率的かを整理します。
転職・就職したい場合(未経験者向け)
倉庫業界への転職や就職を目指す未経験の方は、まず「フォークリフト運転技能講習」から始めるのが取り組みやすいとされています。
約1〜2日、1.6〜3.9万円程度で取得でき、応募書類や面接で採用担当者への訴求力が見込めます。
※受講時間・費用は取得している他資格によって変動します。
現場で広く使われる資格のため、未経験からの一歩目として選ばれています。
現場の業務範囲を広げる場合(在職中)
すでに現場で働きながら担当業務を広げたい場合は、「危険物取扱者の乙種4類」を追加するとよいでしょう。
ガソリン系の商材を扱う倉庫で配置できる可能性が広がり、任される作業の幅が増えます。在職中でも独学で準備しやすく、無理なく挑戦できる資格として知られています。
リーダー・主任を目指す場合
現場のリーダーや主任を目指す段階では、「ロジスティクスオペレーション」「衛生管理者」が登竜門になります。
現場で培った知識を体系立てて証明しながら、管理職への足がかりとなり、チームをまとめる立場に求められる安全管理や業務改善の視点も養えます。
管理職・物流企画に進みたい場合
「ロジスティクス管理」を取得して、管理職や物流企画へ進み、キャリアアップするルートが王道とされています。
経営的な視点から物流全体を設計する力を養え、企画や戦略の立案を担うポジションを見据えられます。
国際物流・専門職に転換したい場合
国際物流や専門職を目指すなら、「通関士」が有力な選択肢です。
取得までに6ヶ月から1年以上かかることが多いため、在職中から計画的に準備を進めておくと無理がありません。
さらに「貿易実務検定」と組み合わせれば、輸出入の実務知識を段階的に固められ、人材としても市場価値が上がります。
資格取得前に確認したい費用・期間・難易度の目安
資格選びでは、費用や学習期間、難易度の見通しを持っておくことが大切です。
ここでは主な資格の費用・期間・難易度(目安)を一覧で示しつつ、全体の傾向を先に押さえておきます。
具体的な目安は次の表のとおりです。
|
資格名 |
受験or講習費用 |
期間 |
難易度 |
|
フォークリフト運転技能講習 |
1.6~3.9万円 |
2〜5日 |
★☆☆(低) |
|
危険物取扱者(乙4) |
5,300円 |
独学1〜3ヶ月 |
★★☆(中) |
|
衛生管理者(第1種) |
8,800円 |
2〜6ヶ月 |
★★☆(中) |
|
ロジスティクスオペレーション(2級) |
8,800円 |
2〜4ヶ月 |
★★☆(中) |
|
倉庫管理主任者講習 |
1.2〜1.4万円 |
講習1〜2日 |
★☆☆(低) |
|
通関士 |
3,000円 |
6ヶ月〜1年以上 |
★★★(高) |
まずは、難易度の低い講習系の資格から着手し、業務範囲と目標に合わせて上位資格へ段階的に進むのが、無理のない取得ルートだといえます。
危険物取扱者や衛生管理者は、数千円から1万円程度の受験料で挑戦でき、独学でも対応しやすい難易度ですが、通関士のように合格率が低く長期の準備を要する資格は、業務範囲や目標に合わせて段階的に進めていくのがおすすめです。
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